脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症(高脂血症)とは

血液中のコレステロール値が高い、または中性脂肪の値が高い、HDL(善玉コレステロール)の値が低い方を脂質異常症といいます。
今までは高脂血症と呼ばれていたのですが、HDL値が低い人も含まれることから、最近は名称を変更し、脂質異常症と呼ばれるようになりました。

脂質異常症(高脂血症)の原因

ほとんどが食生活や運動不足など生活習慣の乱れから来ています。例外的に遺伝により、幼少時から異常を示すこともありますが、こちらはかなり少なく1%ぐらいで、この場合は特殊な検査による診断が必要です。

脂質異常症(高脂血症)の症状

脂質異常症に症状はとくにありません。無症状なので、健診で見つかることが多い病気です。
LDL値が高い方、HDL値が低い方は動脈硬化が進みやすく、そのために血液の流れが悪化することによる病気に伴う症状が色々と現れます。動脈瘤や、脳梗塞、心筋梗塞、腎臓病のほか、足の血管が詰まったりすることもあります。
特に、喫煙をされる方や糖尿病の方は、これらの病気が進みやすくなったりします。
また中性脂肪の高い方では、LDL値が高い方よりは、動脈硬化になる可能性は低いのですが、あまり高い値の場合には、血液がドロドロになったり、膵炎を起こしやすくなります。

脂質異常症(高脂血症)の治療法

昔はコレステロール値が高いというと、コレステロールが多く含まれる卵などを控えるなど食事制限が言われてきましたが、今では一律にコレステロールを控えるやり方は、主流ではありません。
ファーストフード・揚げ物やスナックなどを多く摂る食生活をしているような方には、食事内容を変更して油を控えることで効果もありますが、一般的な生活をしている方には、食事制限はあまり効果がないと思われます。

コレステロールは、体中にあるものの半分は食べ物から、残り半分は肝臓で合成されているため、脂質を過剰に摂取していない方が脂肪摂取を控えてもあまり効果が期待できません。
年配の方では、元々脂質の摂取量が低い方が多く、制限はかえって栄養障害につながる場合が多く、まず、ご自身の食事内容を見直すことが大切です。
脂質をあまり摂取していない方が、安易に卵や肉類の摂取を制限すると、体内で必要なたんぱく質などの栄養が不足するデメリットにより、筋肉量低下などの健康障害の原因になることもあります。

コレストロールは体内で、
1. 細胞膜を作る、
2. ホルモンの材料になる、
3.胆汁の材料になる、
といった重要な役割を担っています。

女性の場合、閉経後に女性ホルモンの生成がされなくなるため、自然とコレステロール値が上がります。そのため動脈硬化が進みやすくなりますが、すぐに治療が必要になる訳ではありません。
動脈硬化の進行には、先にも触れました、様々な要因が関連しており、総合的に判断して、動脈硬化が進みやすい方が治療を受ける必要があると考えられています。

最近では治療のガイドラインに基づいて、コンピュータを用いてのリスク評価も可能となり、当クリニックでも採用し、投薬するべきか判断しています。
重要なことは、自分のリスク、リスクに基づいた管理目標値を知ることです。問題点があれば生活習慣改善を行い、目標とする値まで達せない場合に、初めてコレステロール合成を阻害する薬剤や脂質の吸収を阻害する薬剤などの投与を検討します。

HDL値が低下している場合、HDL値を正常にする有効な薬剤は、残念ながら、現状ではありません。
原因となる喫煙、肥満、運動不足などの生活習慣を改善することが勧められます。

中性脂肪が高い場合は、食事が原因のことが多いです。炭水化物(ご飯類・麺類・おいも類など)や甘いもの(糖分)を多く摂りすぎると、中性脂肪が高くなりやすいです。
女性の場合は、果物(果糖)の摂りすぎ、男性の場合は、アルコールの飲み過ぎ(アルコールは分解されて体内で糖類になります)が原因で、中性脂肪が高くなっている方をよく見かけます。
食事生活改善を中心に行い、薬物治療を行う必要があるのは、動脈硬化進展や膵炎発症のリスクが高い方に限られます。